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天気
思えば、私の人生は…
…何も…
無かった…
街を行き交う人々は何かしらの目的、目標があって行動をしている。
それは様々な欲求から自然と動き出しているからなのか…
難しい事を考えても答えは出ない。
私は、とてもバカだ…
中学を卒業した時の私は、それなりにイケてたと思ってる。
同性や異性の友達も沢山居たし、毎日と言っていい程遊んでいた。
ピアスも開けて、似合わないのに髪も派手に染めたりしちゃって、担任に皆で怒られて、そりゃケンカの1つや2つ無かった訳じゃないけど…
でも、それでも…楽しかった。
なのに。
どこから、私は…
こんな何も無い私になってしまったのだろう。
夜…繁華街のコンビニに置いてある自販機の前で座る私を目もくれず無視する人も居ればチラっと見てすぐ前を向く人も居る。
かと思えば気味悪そうに見てくる人も居るし援助交際目的で興奮気味に話しかけてくる人も居る。
私が何も反応せずただ前だけを向いていると、その話しかけてきたスーツの男性は舌打ちをして目的であろう方向に向かって歩いて行った。
「(声かけなきゃいいのに…)」
---
「(あぁ、今ここで訳もなく叫んだらどうなるんだろう…)」
「(包丁買って道行く人切り走ったら超面白いことになりそう)」
…良くない衝動が頭を駆け巡る。
表情変わらず目だけを動かし、前を向いている彼女はこんな事を考えている。
「(なーんて、こんな事したら私の人生ここで終わりよ、社会的にも)」
鼻息を勢いよく出した後、スッと立ち上がり横の自販機で私が好きなジュースを買った。
強炭酸が聞いていて頭もスッキリするし、なにより慣れている味だから安心感がある。
一口飲んだそのペットボトルを私はパーカーのポケットに仕舞い、先ほどと同じ位置に座った。
先ほどの妙な邪念もどっか行ったようで少し安心した表情で前を見つめる。
何も変わっていないように見えるが、しっかり彼女の中では変化が起きている。
「あぁー、君。ちょっといいかな?」
…うわぁ…
「…」
「おじさん、怪しい者じゃなくて…って急に声かけたらそりゃ怪しいよね?ごめんごめん」
「…」
「でね?なんで声かけたかって言うと君が寂しそうに見えてさ」
--寂しそうに見えてさ…
「(…は?)」
「よかったらおじさん、話聞くよ?別にイヤらしい事一切無しで」
「…なんで」
「えっ?」
「なんで私が寂しいって決めつけるんですか?私が一人だからですか?こんな時間にこんな場所に一人でいる変な女の子だからですか?」
「い、いやいや…そうじゃなくて…」
「私を勝手に決めつけないで!帰って!」
「あ、あぁごめん…悪い事したね…」
「帰れ!死ね!」
そそくさとバツが悪そうに背中を私に向け歩き出す彼を私は泣きそうになりながら、泣くのを我慢しながら見えなくなるまで睨みつけた。
急に大声を出したから?
周りが不審な目で見てくるから?
それとも…
「(…帰ろう…)」
もうここにいる意味は無い、胸が詰まるだけだ。
立ち上がり、彼女は自宅に向かって歩き出した。
ポツポツと、雨が降り始める街のど真ん中で
彼女は下を向きながら、歩き続けた。
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