紅月 ①

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 アルバシア王国の東の森には変わった物が生きている。  ズルワと名付けられた森は、春は色とりどりの花を咲かせ、秋はたわわな果実を実らせる。平和な森だった。だが、ある時から恐ろしい森になってしまった。近くの村に住んでいた娘が、愚かなことにも獣で森の王である狼と契りを交わしたことによって、『人狼』と言う化け物が産まれてしまった。  人狼は昼間は普通の人間に見える。夜になると頭から狼の耳を、腰からは狼の尾を生やし、夜な夜な東の森から村や街の人間を貪り喰らうようだ。いざという時には人間よりも何倍も大きい狼の姿にもなる。  人間の脅威となった人狼を撲滅すべく、当時のアルバシア国王は人狼を日夜狩る組織を創設。別名 《狼の旗》。創設を象徴する彼らの腰飾りには人狼の毛皮が使われている。   「彼らがいればもう安全。」 そう国民は思っていた。
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