花手紙の魔法使い

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花手紙の魔法使い

 自分の文字が嫌いだった。  友達にノートを貸せばやんわりと「読めない」と指摘され、先生から提出物の字を注意をされたこともある。それでも気にならない私は神経が図太いのだと、あの時までそう思っていた。 「この花帆ってやつ、おかしな字を書くんだな」  顔も名前も知らない男子生徒だった。  クラスの廊下沿いにある掲示板に張り出された作品の一つを指差し、友人と笑い合っている。たまたま居合わせた私はとても恥ずかしくなり、その場から逃げ出した。  古典の授業で百人一首の句を一つ選び筆ペンで書いたものを展示していた。八クラスの作品が飾られており、壁を眺めるだけで似たような作品が並び目が泳ぐ。誰もまともに見ないと思っていたが、彼は確かに私のミミズが這い回った文字を笑っていた。
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