シロツメグサ

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シロツメグサ

クローバーの花言葉は 「私のものになって」 「幸運」 シロツメグサの花言葉は 「私を思って」 「約束」 子供頃の記憶の中の君の姿。 「いつかまたこの場所で君に永遠(トワ)の愛を誓うよ」 シロツメグサが咲き誇る。 丘の上の小さな教会。 「約束しよう」 君と交わした淡い約束。 小指と小指を絡ませ、お互いに離れた。 幼き日の二人の姿――――。 私は今、君との約束の場所にいる。 「君は覚えてるかな?」 (覚えていますか?私のことを?) 柔らかな風が吹き、私の髪を撫でていく。陽の光が教会の中のステンドグラスに反射して、キラキラ煌めき幻想的な雰囲気を醸し出している。 ステンドグラスの真下にあるイエス・キリストの像――――。 私は祈りを捧げる。 ふと目の前が暗くなった。 目の前に影が満ちる。 「―――貴女は神を信じますか?」 その掌の温もりに その柔かな声音に その懐かしい香りに 心が震えた―――――。 「貴方に永遠の愛を誓います」 私を抱き締め甘く囁く彼――。 私は彼に身を委ね 永久の誓いを立てる。 お互いの唇と唇が触れ合い。 ひとつに重なる。 **** 綿菓子のように甘く柔かな感触、頬を染め、天へ伸ばされた指先はお互いを求め、絡みあう――。 迸る情熱が、神聖な空間に不釣り合いな不協和音を生み出すも、離れぬ身体は熱を宿し続けた。 神の前で露になる美しくも汚れた ヒトの 姿。 静な寝息を立てる 愛しき人の胸にクローバーを贈る。 「君に幸あれ」 永遠を誓い。 どうか僕のものになってほしいと願いを込めて。 鐘の音が鳴り響き。 天からの祝福が聞こえたような。 そんな気がした―――。
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