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花の手紙
8
一輪、また一輪と――
リルは、庭師の息子から届けられる花々を、小さな花瓶へと挿し入れていた。
日ごとに増えゆく色とりどりの花が、次第にブーケを形作ってゆく。
けれど、花に添えられている封筒の方はといえば。
ただのひとつも、リルによって開封されてはいなかった。
花瓶の傍に積みあがっていく手紙の束。
それが目に入るたびに、リルの胸が、ぎゅっと引き絞られる。
あの子が、何を書き送ってきたのか――
恥ずかしく怖ろしくて、わたしには、それを確かめる勇気がでない。
けれどもその日、リルはふと気づいた。
「今日」はまだ、「花が届けられていないのだ」ということに。
なぜだか、胸騒ぎがした。
その気持ちは、どんどんと高まっていく。
そして、ついにリルは、手紙を手に取った。
封を開き、便箋を取り出す。
中を読んですぐに、リルは息を飲んだ。
もうひとつ、またひとつ。
リルは次々と、花に添えられていた封筒を開いていく。
――文面は、どれもほぼ同じだった。
リルは部屋を飛び出し、外へ駆け出した。
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