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次の仕事までは、まだもう少し間があるのだがな――
テディ・バートラムは、自室の衣装戸棚を開ける。
そして自分のトランクをひとつ、引っ張り出した。
ロンドンへ戻ろう。今すぐに。
少なくとも、自分がアンテソープにいなければ、リルは、アンやオーガストたちとくつろぐことができるのだから――
砂を噛むような晩餐の間に、テディは、そう心を決めていた。
とはいえ、執事やフットマンを呼んで、大がかりな荷造りをする気にはなれない。
当座の物だけを詰めて、静かに立ち去さればいいさ。
そんな風に思いながら、テディは、戸棚から幾つかの衣類を掴み取ると、ベッドの上へ放り投げていく。
ふと、どこかに肘が当たったはずみで、ハンガーに掛かっていた服が、スルリと床に滑り落ちた。
白く滑らかなそれは、リルの夜着だった――
もとに戻そうと、テディはそっと、それを拾い上げる。
刹那、テディはそこに、甘やかな妻の香りを嗅ぎ取った。
そんなごくかすかな残り香に、テディの胸はきつく締めつけられる。
手にした夜着に、テディはゆっくりと顔を埋めた。
ぞくりと、背中に重い痺れが走り抜ける。
次の瞬間、テディの下腹部が鈍く痛んだ。
あまりにも急激に男の部分が張りつめてしまったせいで、「それ」がスラックスの縫い目に食い込まんばかりになっていたのだった。
半ば無意識のうちに、テディの指は、スラックスの留め具を外していく。
やがて、熱く固い屹立が露わになった。
先端にドレスシャツの裾が触れていて、そこには染みが広がっている。
獣めいた呻き声を洩らし、テディは、シャツの上から脈打つ自分自身を握りしめた。
なんて、馬鹿げたことを、俺は――
そんな自嘲の声を、頭の片隅で聞きながらも、テディは自らの昂りから手を離すことができなかった。
妻の夜着に顔を埋めたまま、ひたすら激しく、自身の屹立を愛撫する。
掌の中、痙攣しながら、はちきれんばかりに太さを増していく。
そんな「自分自身」の大きさに、テディはあらためて驚きを隠せない。
こんなものを――
俺は、あのはかない腰に押し当てていたのか?
こんなにも熱く張りつめた凶暴な猛りで、あんなか細い身体を貫き揺すぶっていただなんて。
つらかったのではないだろうか? 本当は。
けなげにも、「妻として俺を受け入れなければ」と、リルは、ただじっと耐えていたのではないか?
もしかしたら、俺は。
リルに、とてもひどい思いをさせ続けていたのかもしれない――
すべての事々が自分を責め苛むように感じられて、テディの喉元には、突き上げてくる肉の悦びとともに苦い後悔がこみ上げる。
けれども、走り出した男の獣慾は、もうテディ自身にも止めることはできなかった。
腰は意思とは無関係にうごめき、手は指は、今にも爆発しそうな自らを激しく擦り続ける。
――もうすぐそこまで、「それ」はやってきていた。
ひとつ、押し殺した呻き声を上げると、テディは激しく痙攣しながら、暑い塊のような欲望を吐き出した。
ひどく粘度のある熱い液体が溢れ出る。
片手では受け止めきれなかった大量の白濁が、テディの指の間から溢れ、磨き抜かれた濃茶の床の上に滴り落ちて、情けなくも淫らな水音を立てていた。
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