夏の午後

5/7
前へ
/22ページ
次へ
3 「はなしてください……テディ、いじわる。きらいです」 こう言いながら、網に掛かった小鳥のように身悶えもがくリルの瞳を、テディが覗き込んだ。 「嫌い? 嘘だ。君はこれを嫌いなんかじゃない」 「うそじゃないです」 ふたたび、くちびるを塞ごうとするテディを、リルは突き飛ばすようにして押しのけた。 そしてドレスの襟元を乱したまま、壁に穿たれただけの戸のない出口へと駆け出す。 「雨がひどい、リル。まだ出て行けはしない」 テディが、リルの細い顎へと指を伸ばして振り向かせた。 ふたたび、夫を責める言葉を口にしようと、リルのくちびるが小さく戦慄いた刹那、テディが、それをキスで押しとどめた。 やわらかく繊細で、くすぐるようなくちづけに、リルの身体からは、すべての力がくったりと抜けてしまう。 そんな妻を、しかと抱き留めると、テディはまた、リルをさっきの卓の上へと載せ、ぞんざいなほど大胆に、リルのドレスの裾を捲り上げた。 「ねえ、君。こんなことは『はしたない』と思っているんだろう?」 囁くテディの熱い息が、リルの耳朶を燃やす。 「『はしたない君』が見たいんだよ、可愛い奥さん。俺だけにはそれを見せて、いいかい?」 テディの長い指が、リルの秘所へと入り込む。 その部分は、先からのキスと愛撫で潤み熱を帯びていて、リルの意思とは無関係に、テディの指先の動きに反応した。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

114人が本棚に入れています
本棚に追加