夏の午後

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襞に分け入ったテディの指が、ぬかるみの奥深くへと挿し入れられる。 「なにもかもを知り尽くしている」とでも言わんばかりに、その指はリルの中で、横暴に動き回った。 くちびるをきつく噛み締め、固く瞼を閉じ、睫毛を震わせながら、リルは、こみ上げる喘ぎと呻きとを押し殺す。 「我慢しているのかい? リル」 軽口めいた、からかいの言葉を口にしながらも、テディの声は、荒ぶる男の肉慾に憑かれ、震えてかすれる。 「とても……気持ちが良いだろう? とてもね。そのはずだ、俺には分かってる」 強い否定の意を示そうと、リルは激しく首を横に振った。 すると出し抜けに、テディが指を抜き取る。 リルのくちびるから、思わず短い悲鳴が洩れた。 噛み締め続けていたリルのくちびるは、真紅に近いほどに色づいている。 テディの言うとおりだった。 確かに、リルの身体は、快楽の階段を駆け上がる途中だった。 「イヤ」という気持ちとは裏腹に。 恥ずかしく、そして後ろめたく思う気持ちとは裏腹に―― テディは、指を戻さない。 くちづけも、胸のふくらみへの愛撫も止まった。 リルの震える身体は、熱い疼きを帯びる下腹部は、甘い痺れの中、宙ぶらりんに放置される。 知らずリルは、テディの髭だらけの頬へと両手を伸ばしていた。 そして、こみ上げる疼きを抑えようとでもするかのごとく、自分の薄紅色に染まった頬を、動物の仔めいてやわらかなテディの頬髭へと、無心に擦りつける。 テディのくちづけが、ひとつ、リルの額に落ちた。 「言ってごらん……『もっと』って」 そして、一瞬だけ、リルのくちびるをかすめるキス。 「ほら、『もっと欲しい』って、言うんだよ、リル」 リルの長い金の睫毛が震えた。 「どうしたの? 妖精さん、言ってごらん」 テディ……と。 溜息のようにちいさな声が、リルの儚いくちびるから洩れ出でる。 「っと……もっと……」 「『もっと』? 続きは何だい? リル」 テディは、一歩も譲らなかった。 「テディ、いや……」 リルのサファイアの目から、大粒の涙がこぼれ落ちる。 「『厭』じゃない……『もっと』どうして欲しい?」 テディが、教え諭すようにたたみかけた。 リルがついに、テディの耳朶へとくちびるを寄せて囁く。 「『もっと』、テディ。やめ……ないで」 テディが、面白がっているとも困惑しているともつかない微笑を口もとに浮かべる。 そしていきなり、リルの中へと自らの指を挿入した。
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