紫の花

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紫の花

帰りのホームルームが終わり、机の中の教科書を鞄にしまおうとした時、中から一輪の花が出てきた。  「ん? 何これ?」  誰に言うでもなく、一人呟いた。  紫色でつぼみのような、まだ花びらが開きかけのような、そんな花。  あいにく俺は、花に関する知識が皆無と言ってもいいのでこれがなんの花なのかは、皆目見当もつかない。おそらく、高校3年生の男子なんてそんなもんだろう。  「たいきー帰ろーぜー」  「あぁ……」  花をボーと見ている間に、秀がいつものように、気怠そうに話しかけてきた。  俺は急いで帰り支度をした。    「ただいまー」  誰もいないから虚しいな。  親は共働きで、高校1年生の妹は部活で遅くなる。だから真っ直ぐ家に帰った時は大体一人だ。    「あっ……」  時間割をしている時、例の花が潰れた状態で鞄から出てきた。完全に忘れていた。  あの時、秀に話しかけられて急いで支度をしたせいでそのまま入れてしまった。        
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