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アルバイト
いざ、辞めると言い出そうと思うと、やはり緊張する。店長は優しく、若い男性なのでとても話しやすいが、それでも今日は胸が音を鳴らす。
「ふぅー」
大きく息を吐いていつものようの、バイト先の飲食店に入った。
「どーもでーす」
「はーい、今日もじゃんじゃん働いてよー、中林くん」
店長の気さくさが今日ばかりは申し訳なくなる。
「あのー、店長、ちょっと話があるんっすけど……」
「お、どーした改まって」
「受験もあるんんで今月いっぱいで、バイトを辞めたいんですけど……」
勇気を振り絞った。
「あーそーだよなー。中林くんもー受験生だもんな。しょうがない。分かった。勉強頑張れよ!」
「すみません。どうもです……」
やっぱりこの人が店長で、本当に良かった。
「じゃあ、着替えてきます」
「あっ、忘れてた」
ブレザーを脱いで、服の切れ目に目がいった。
帰ったら、母親に言っとくか。
「お疲れ様でーす」
「はい、お疲れ。周りも暗いし気をつけてね」
何事もなくバイトが終わった。
「ただいまー」
「あぁ、大紀お帰り」
今日は返事があった。
既に家族は、食卓を囲んでいた。
「母さんこれ、ちょっとブレザー破けちゃった。縫ったり出来る?」
そう言って母に制服を預けた。
「もー、こんなに破けて、小学生じゃあるまいし」
ぐちぐち言いつつも、受け取った。
俺は鞄だけ自分の部屋に置き、風呂に入った。
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