アルバイト

1/1
前へ
/15ページ
次へ

アルバイト

 いざ、辞めると言い出そうと思うと、やはり緊張する。店長は優しく、若い男性なのでとても話しやすいが、それでも今日は胸が音を鳴らす。 「ふぅー」  大きく息を吐いていつものようの、バイト先の飲食店に入った。  「どーもでーす」  「はーい、今日もじゃんじゃん働いてよー、中林くん」  店長の気さくさが今日ばかりは申し訳なくなる。  「あのー、店長、ちょっと話があるんっすけど……」  「お、どーした改まって」  「受験もあるんんで今月いっぱいで、バイトを辞めたいんですけど……」  勇気を振り絞った。  「あーそーだよなー。中林くんもー受験生だもんな。しょうがない。分かった。勉強頑張れよ!」  「すみません。どうもです……」  やっぱりこの人が店長で、本当に良かった。  「じゃあ、着替えてきます」  「あっ、忘れてた」  ブレザーを脱いで、服の切れ目に目がいった。  帰ったら、母親に言っとくか。  「お疲れ様でーす」  「はい、お疲れ。周りも暗いし気をつけてね」  何事もなくバイトが終わった。  「ただいまー」  「あぁ、大紀お帰り」  今日は返事があった。  既に家族は、食卓を囲んでいた。  「母さんこれ、ちょっとブレザー破けちゃった。縫ったり出来る?」  そう言って母に制服を預けた。  「もー、こんなに破けて、小学生じゃあるまいし」  ぐちぐち言いつつも、受け取った。  俺は鞄だけ自分の部屋に置き、風呂に入った。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加