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俺はトラックの助手席に便乗した。
先程案内人に手渡された温泉饅頭が役に立ったのだ。
男は鼻歌混じりに饅頭を頬張り、曲がりくねった細い山道を軽快に駆け登ってゆく。
「この辺は昔、修学旅行生を乗せたバスが転落した事故があったんだ♪」
「だったらもう少しスピードを落として下さい!」
俺は揺れる車内でブレるカメラを必死に守っている事しか出来なかった。
カメラは回しているが、どうせ激しい揺れで映像は使い物にならない。
面白い絵でも無いから後でカットする場面だ。
電池の節約の為にも切っていた方が良かったかも知れない。
「それにしても険しい山道ですね…
ああ、そう言えばこの辺に珍しい家って知りませんか?崖っぷちにガツンと建っている感じの…」
「ああ?それならよーく知ってるぜ!
何せ俺の家だからな!」
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