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こ、こいつ…悠々自適な村生活を送ってやがる!
俺は何だか羨ましくなって来た。
セコいネット番組配信なんか辞めてしまって、今からでもこいつに弟子入りして陸の孤島生活を送るのも在りかも知れない。
「俺は晴耕雨読の日々を送っている。
収穫した野菜を温泉街に売りに行くんだ。
育てた野菜が途中でダメになったり、
せっかく収穫しても全然売れない日もある。
そんな日は趣味で小説を書いて投稿しているんだ」
男はケータイ小説のサイトを開いて見せる。
知らない作家名だ。
恐らく彼はこの先も売れる日は来ないだろう。
「山の道のりは長い。
生活は厳しく自然は時に牙を剥く。
小僧、それでもワシと来るか??」
「いや、住みたいとは言ってませんけども」
急に此方の心を悟ったみたいな台詞をほざいて来たので俺は目一杯反発した。
仙人気取りなのが余計に腹が立つ。
こいつに弟子入りしても得られる収穫は少なそうだ。
俺は取材がてらに成り行きで何やら食い荒らされて駄目になった畑と破壊された罠とおぼしき木屑の後片付けを手伝わされる羽目になった。
「良い事ばかりではない。
夜になると来るんじゃよ。ああ、今日もまた来おった…ほれい」
俺は仙人口調が抜けない中年に突っ込むのもイラついたので適当に相槌打った。
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