マタハリの失敗~①~

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ヘンリク「良いのか、英国大使館の息子が女スパイのブロマイドなんか持ってって。」 アーサー「平気さ。彼女はオランダ人だし、亡くなってる。大戦(第一次世界大戦)の時は、皆こういう写真持ってったんだ。」 ヘンリク「彼女の本名はマルガレータ・ヘールトロイダ・ツェレって言うんだ。”マタハリ”は芸名。レーワルデン出身だった。」 アーサー「知ってる。オランダでは同情的な感じだね。」 ヘンリク「そんなに悪いイメージではない。それどころかスターだ。グレタ・ガルボが演じたんだからな。」 映画『マタハリ』ではグレタ・ガルボが、映画『間諜X27』ではマレーネ・ディートリッヒがマタハリがモデルのヒロインを演じている。 アーサー「彼女のコードネーム知ってるか?”H21”だよ。”暁の目”とも言われたそうだ。」 ヘンリク「それは知らなかった。とにかく”伝説の女スパイ”として名を遺したんだ。」 アーサー「スパイとしては2流、3流だった。そもそもスパイは表に出ちゃダメなんだから。」 ヘンリク「ハニートラップが失敗したのかな?」 アーサー「分からない。色々知り過ぎたのかも知れないし、作戦の失敗を彼女1人に押し付けたのかも知れない。」 マタハリのブロマイドとポストカードをアーサーに返す。 ブロマイドを手帳に挟み、後は鞄に仕舞アーサー。 dd598a74-ce6f-4cea-80b2-ea58a8813261 マタハリはオリエンタルダンサー(ヌードダンサー)として大戦前夜のパリで一世を風靡(ふうび)した。 フランスの貴族社会、外務省、軍当局、各国大使館首脳らの共通の愛人として、パリの上流社会に自由に出入りできたので、大戦が始まるや、ドイツにねらわれ、そのスパイ網のなかに組み込まれた。 1917年2月フランス当局に二重スパイとして、第一次世界大戦で多くのドイツ人、およびフランス人兵士を死に至らしめた容疑で逮捕、起訴された。 その逮捕は、ドイツの在スペイン駐在武官がマタ・ハリを暗号名「H-21」なるドイツのスパイとした通信がフランスによって解読されたことからなされた。 同年10月銃殺される。 彼女のスパイ活動は素人の域を出なかったのに、軍法会議が死刑の判決を下したのは、同じ年(1917)フランス陸軍内で暴動があり、国民の目をそらす必要があったからという。 7cab7d2a-7c50-4ebe-a308-1421082b5a47
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