ガルボの葉書き

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ガルボの葉書き

「ハッ!」 マーケットを歩いていると、アーサーが足を止めた。 「どうした?」 後ろを向くアーサー。 「彼女だ。シルビアだよ!」 声を潜めながら、動揺を隠せない。 「どこ?」 「家族と一緒だ。骨董品店の前だ。ラウラ先生もいる。」 前方に骨董品店がある。 家族らしき4人が骨董品を見ている。 ヘンリク「ラウラ先生だ。」 母親と話しているラウラ先生を見つけた。 近くに男の子と女の子がいる。 女の子はつばのある帽子を被り、下を向いているので顔が分からない。 「あの白い帽子の子?顔が見えない。」 恐る恐る後ろを振り返るアーサー。 白い帽子がようやく顔を上げた。 「間違いない。シルビアだよ。」 白いブラウスにモスグリーンのスカートを履いている。 優し気な大きな瞳がキラキラしている。 「確かに・・・、すごく可愛い。」 思わず見とれるヘンリク。 「手紙書いたんだろ?持って来てないのか?」 「持って来てないよ!」 「じゃあ、今書け!」 「ええ?!」 慌てるアーサー。 ヘンリク「向こうへ行こう。」 建物の壁際に向かう2人。 ヘンリク「落ち着け。さっき買ったポストカードを出せ。」 鞄を探りポストカードを出すアーサー。 ポストカードはジョゼフィン・ベーカーとマタハリで、どちらもヌードだ。 ヘンリク「ダメだ。これを使え。」 自分の鞄から『マタハリ』のグレタ・ガルボのポストカードを出すヘンリク。 ヘンリク「ヌードのマタハリよりマシだ。」 万年筆を出し、アーサーに渡す。 「・・・ああ!何て書くんだっけ?!」 「『会って話がしたい。ダメでも連絡して欲しい。手紙でも良いから。』だ。」 手が震える。 「ダメだ!お前が書いてくれ。」 ヘンリクに万年筆を渡す。 ポストカードを壁に押し当てスラスラと書くヘンリク。 アーサーの連絡先を記すのも忘れない。 「俺がラウラ先生とお母さんに話しかけてるうちに、シルビアに渡すんだ。」 ポストカードをアーサーに渡す。 「上手くやれよ。」 緊張した面持ちで頷くアーサー。
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