Virgin Complex

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Virgin Complex

イヴィは週に一度のバレエレッスンで、ジャンプの着地に失敗して足に痛みが残った。 歩行や日常に問題はないが、しばらく部活のバレエは休む事にした。 最近は看板制作の方に情熱が向いていたので、ガッカリする事もない。 それどころか、内心ほっとしていた。 16、7歳にもなると、学校でも彼氏のいる子が何人かいる。 イヴィもその1人だが、バレエ部員にも色々と聞かれて少々うんざりしていた。 彼女たちの聞きたい事はいつも決まっていた。 『どうしたら彼氏が出来るのか?』 『どうしたらモテるのか?』 『どうやってアプローチするのか?』 下級生の質問はこの位だが、4年生以上になると、内容もより具体的になってくる。 『大人のキスをいつしたか?』、などと聞いてくる。 それだけならまだしも、『いつ、どちらからベッドに誘ったか?』 『避妊具をどうしたか?』 『どこでしたか?』 『どうだったか?』 そして最大の関心事は、『最初はどの位痛いのか?』 『痛みは本当に最初だけなのか?』 『本当に出血するのか?』 イヴィは「そんな事は答えられない」と逃げた。 リアがいたら「そんな事聞くものじゃない!」と言ってくれただろう。 上級生のおしゃべりな女子の中には、そういう下ネタにも乗りよくペラペラと話す子もいる。 ”いつ”、”どこで”、”どうやったか”、を自慢げに話すのだ。 聞くに堪えなかった。 パートナーは”2人だけの事”をバラされて平気なのだろうか? そんな事を他人に言いふらすのが信じられなかった。 しかも、「彼とはどうだった?」などと、イヴィに聞いてくるのだ。 下ネタを聞かされるのも嫌だし、話題を振られるのはもっと嫌だった。 ヘンリクとは恋人として半年経つが、キス以上の関係ではなかった。 求めて来たら応じようという覚悟はしても、色々な情報に心惑わされる。 特に”痛み”や”出血”と聞くと、不安になり、怖くなる。 正直なところ、『抱かれたい』という気持ちはある。 しかし、恐れと憧れが混在していて、複雑な心境だった。 ヘンリクはそういう心境を敏感に感じ取っているようだった。 したくないのではないのは分かっている。 キスをした時に腰や胸に触れて来る事があるし、たまに後ろ姿をじっと見ている時がある。 以前、太ももを触られた時にも、思わず体を離してしまった。 ヘンリクは気にする様子もなかった。 「キスして。」 と言えばしてくれる。 多分自分次第なのだ。
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