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マタハリの失敗~②~
4月26日(火)
ヘンリクとアーサーは学校の運営会議に生徒会役員として出席した。
校長、教職員、生徒会役員ら16人で教室に集まり、会議をしていた。
レーナも出席している。
終了間際に、教室のドア窓から中を覗く人影が見えた。
ラウラ・バレーラ先生だ。
彼女は非常勤講師なので運営会議には出席しない。
誰か待ってるようだった。
会議が終了し、皆が席を立つ。
数人が教室を出て行った後、ラウラ先生が入って来た。
真っ直ぐ校長の元へ向かう。
「校長先生、相談があるんです。」
「何かな?午後から外出しなくてはならない。」
これから昼休みだ。
「直ぐに済みます。お時間は取らせません。」
「それなら、今聞こう。」
ヘンリクとアーサーも支度を急ぎ、教室を出る。
皆が教室を出ると、レイモンド校長はドアを閉め、ラウラ先生と円卓テーブルの隣同士に座った。
ドア窓から見ると、ラウラ先生は真剣な表情をしている。
アーサー「どうしたのかな、ラウラ先生。」
ヘンリク「さあ・・・。」
ラウラ先生には恋愛系の噂話は絶えずあった。
恋人は複数いるとか、いないとか・・・。
ラブレターを書く生徒がいる一方で、恋愛の質問にはいつも、「ご想像にお任せするわ」と、笑顔でかわしていた。
最近の噂では、ある男子生徒の父親に言い寄られているとか。
または、生徒の父親と不倫関係にあるとか。
いずれも根拠のない噂話だ。
噂好きな女子生徒たちが面白可笑しく広めているに過ぎない。
昼休みの後、手帳がない事に気づいたアーサー。
「どこで失くしたかな?」
思い当たるのは先程、運営会議をした教室だ。
教室へ行ってみるが、誰もいない。
手帳はどこにもなかった。
手帳にはマタハリと、シルビアからもらったガルボの葉書きが挟んである。
ヘンリク「ラウラ先生か校長に拾われたのでは?」
アーサー「校長の方がマシだ。ラウラ先生なら・・・、まずい事になる。」
急に不安になるアーサー。
学校が終わると直ぐに聖ステーフェン教会へ向かった。
部活のある月曜と水曜以外の、火、木、金はシルビアと17時まで教会で過ごしていた。
1時間位の間だが、アーサーにとって、夢のような時間だった。
教会で待っていると、シルビアが現れたので安堵する。
失くした手帳に葉書きを挟んでいた事。
ラウラ先生に拾われたかも知れない事を話した。
シルビアの顔が曇る。
ヘンリクに確認してもらったが、校長は手帳を拾っていないらしい。
手帳の落とし物は届いていないそうだ。
やはり、ラウラ先生が持っているのかも知れない。
「まずい事になった・・・。」
「ラウラ先生が持ってるとは限らないだろう。」
「他の生徒や先生なら、拾得物として届け出るのでは?財布じゃないんだし。男の手帳なんて持っててもしょうがないだろう。」
「・・・そうだな・・・。」
頷くヘンリク。
「寄りによって、マタハリのセミヌードも一緒なんだ。イメージ悪いだろ、絶対・・・。」
「マタハリは正に”魔性の女”だな。」
苦笑いするヘンリク。
「笑いごとじゃない!シルビアと会えなくなるかも知れない。」
「次の火曜日まで待つしかないな。」
ラテン語の授業は火曜日だ。
木曜も金曜もシルビアは教会に来なかった。
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