警告

1/1

45人が本棚に入れています
本棚に追加
/601ページ

警告

5月3日(火) ラテン語の授業が始まる直前に、ラウラ先生が顔色一つ変えず、無言でアーサーにメモを渡してきた。 『手帳を返すので残ってください。』 アーサーはそっとヘンリクにメモを見せた。 ラウラ「Nos vemos la semana que viene. (また、来週)」 授業が終わり、1人残るアーサー。 戸を閉め、アーサーの座る机に手帳を置く。 手帳を確認する。 マタハリもガルボの葉書きもそのままだ。 「Gracias・・・.(ありがとう)」 窓の外に目をやりながら頷くラウラ先生。 「シルビアに近づかないで欲しいの。」 「・・・・・。」 「お礼はしたでしょう。」 「・・・シルビアが好きなんです。」 「何言ってんの!あなたもうじき卒業じゃないの。イギリスに帰るんでしょう?!」 「確かに・・・、その通りですが、直ぐに会いに来ます。」 「皆そう言うのよ。用が済んだら”ハイ、サヨナラ”ね。目づらしく連絡があったとしても、最初だけ。そのうち来なくなるわ。だって、そうでしょう。楽しい新生活が待ってるもの。大学へ行けば素敵な女の子も大勢いるわ。」 首を振るアーサー。 否定しようと口を開きかける。 ラウラ先生がその口を塞ぐようにまくしたてる。 「シルビアを傷つけたくないのよ、分かるでしょう?!家族は私の全てよ!私が家族の為に、どれだけ尽くして来たか!あなたにわかる?!シルビアはまだ子どもなの、私が守ってやらなくちゃいけないの!!」 「シルビアを傷つけたりしません。絶対に!」 ラウラ先生の目を見てハッキリと言うアーサー。 そこは引き下がれなかった。 「・・・あなたの目的は分かってる。とにかく、シルビアの事は諦めて!いいわね!!」 強い口調で言い残し、ラウラ先生は教室を出て行った。
/601ページ

最初のコメントを投稿しよう!

45人が本棚に入れています
本棚に追加