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警告
5月3日(火)
ラテン語の授業が始まる直前に、ラウラ先生が顔色一つ変えず、無言でアーサーにメモを渡してきた。
『手帳を返すので残ってください。』
アーサーはそっとヘンリクにメモを見せた。
ラウラ「Nos vemos la semana que viene. (また、来週)」
授業が終わり、1人残るアーサー。
戸を閉め、アーサーの座る机に手帳を置く。
手帳を確認する。
マタハリもガルボの葉書きもそのままだ。
「Gracias・・・.(ありがとう)」
窓の外に目をやりながら頷くラウラ先生。
「シルビアに近づかないで欲しいの。」
「・・・・・。」
「お礼はしたでしょう。」
「・・・シルビアが好きなんです。」
「何言ってんの!あなたもうじき卒業じゃないの。イギリスに帰るんでしょう?!」
「確かに・・・、その通りですが、直ぐに会いに来ます。」
「皆そう言うのよ。用が済んだら”ハイ、サヨナラ”ね。目づらしく連絡があったとしても、最初だけ。そのうち来なくなるわ。だって、そうでしょう。楽しい新生活が待ってるもの。大学へ行けば素敵な女の子も大勢いるわ。」
首を振るアーサー。
否定しようと口を開きかける。
ラウラ先生がその口を塞ぐようにまくしたてる。
「シルビアを傷つけたくないのよ、分かるでしょう?!家族は私の全てよ!私が家族の為に、どれだけ尽くして来たか!あなたにわかる?!シルビアはまだ子どもなの、私が守ってやらなくちゃいけないの!!」
「シルビアを傷つけたりしません。絶対に!」
ラウラ先生の目を見てハッキリと言うアーサー。
そこは引き下がれなかった。
「・・・あなたの目的は分かってる。とにかく、シルビアの事は諦めて!いいわね!!」
強い口調で言い残し、ラウラ先生は教室を出て行った。
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