世界で一番、君が好き ―花咲く時間 番外編―

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「よし。じゃあ、まずは具材を切ろう。深陰はウインナーを切るぞ」 「陽向ちゃんは、ピーマンを切ろうね」 同じく小春が二人にと用意した子ども用の包丁を握ると、深陰は慎重に、陽向は勢い良く刃先を振り回しながら、椅子の上に立ち上がってテーブルに置いたまな板の上でそれぞれの具材を切り始めた。 『こはる、ぴーまんあまい?』 「ピーマンは少し苦いの。これはお菓子じゃなくて、野菜だよ」 『やさい!』 「深陰、ウインナーはこうやって斜めに切って…。そうそう、上手いぞ。次は一人でやってみ」 『う、うん…。うめ、これでいいの?』 「そうそう、それで大丈夫。深陰、上手いぞ」 ()()(あい)(あい)とした雰囲気の中で調理を進めていると、不意に戸の向こうから『ごめん下さいまし』と落ち着いた女性の声がした。 その声に気付いた小春が、梅太郎に陽向を任せて戸口に向かいそっと戸を開けると、薄暗い廊下の端に綺麗な顔立ちの女性が立っている。 そして、その女性に手を引かれる様にして、憮然とした表情(かお)で足元を見つめる九頭龍大神の姿もあった。
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