メダカとコーヒー

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メダカとコーヒー

あるとき自分のメダカの水槽の掃除をしようとメダカを掬った僕は誰かに声をかけられた。 「ねぇ君、ちょっと!」 誰かいるのかと見回してみても僕の部屋には 僕だけだ。 僕は精神障害なのだが悲しいことに幻聴や、幻覚をあまり嘘と思えない。 だからこの時も僕はメダカの声を幻聴とはあまり思わず、ダメだと分かっていて、つい、返事をしてしまった。 「え?もしかしてメダカ?」 「そうだよ僕だよ!」 「本当?」 「他に誰がいるのさ!」 「あ、ああ、ごめん」 それから僕達は毎日色んな話をした。 同じ大学にいる好きな子の話、大学の教授の話、大学の友達の話。 僕達が友達になるのに時間はかからなかった。 またある時、水槽の掃除をしようと友達のメダカを掬った時、そのメダカがいきなり大きく跳ねた。 驚いた僕はメダカを自分のマグカップの中に落としてしまった。マグカップの中にはコーヒーが淹れてあった。慌てた僕はコーヒーの中に指を突っ込んで、床の上にまた落としてしまった。  慌てて焦った僕はこぼしたコーヒーで足を滑らせ友達を踏んでしまった。 僕の小さな、だけれど大切な友達は死んでしまった。
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