1人が本棚に入れています
本棚に追加
窓屋さん
「いっちねんせーになったーら、いっちねんせーになったーら」
僕は龍一。今年の4月から小学校一年生だ。
今は3月。お母さんと手を繋いで、幼稚園から帰るところだ。
「うふふ、すっかり一年生の気分ね」
お母さんは気分が良さそう。
僕もお気に入りのお菓子を買ってもらえて機嫌が良い。
「うん!だって僕もうすぐ一年生だもん!あっ!こんなところに道がある!お母さん、行ってみよう!?」
僕は何故かその時、誰も知らない道というのにわくわくした。
誰も通った事がない道かもしれない。そう思ったんだ。
だから、お母さんの方をろくに見もせずに、繋いだ手をぐいぐいと引っ張って行った。
「ねぇ、お母さんすごいね!」
もう少しで路地が終わり、開けた場所に出る、海が見えてきた時、お母さんに話しかけた。
ハッと気付くと、僕はお母さんの手を離してしまっていた。
「お母さん?」
振り返っても誰もいない。
「お母さあん」
そう叫ぶと、
「いらっしゃいまし」
声が聞こえて、少し落ち着いて辺りを見回すと、
小さい露店のようなものが目の前にあるのに気付いた。
あそこにお母さんがいるかもしれない!
そう思うといても立ってもいられなかった。
「こっこんにちはー。お母さん居ますかー」
お店の人に聞こえるように大きく言って、お店の中を見回した。
すると、
「うわあ、ここ、何のお店?」
最初のコメントを投稿しよう!