第20章(1)アカリside

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*** 「……お願いします。 どうかヒナタとヒカルを、この家の子供として置いて下さい!」 全てを話し終わって、私はお祖父様に頭を下げた。 部屋の中がシンッとして、暫くして正面から席を立ち上がる音が聞こえたと思うと……。 「その件も含めて、考える時間をおくれ。 ……今日は泊まって行くんだろう?部屋を用意させる」 その言葉に私が頭を上げると、お祖父様は背を向けて扉の前に居て、私と顔を合わせずに部屋を出て行ってしまった。 パタンッと閉まった扉を見つめていると、アラン様が私の手をそっと握る。 「焦る必要はない。 ゆっくり時間をかけて話し合おう」 「……はい」 ゆっくり、時間をかけて……。 そうすればきっと、この手を自然に握り返せる日もくるだろう。 私は自分に、そう言い聞かせていた。 そして、頑張って全うしたこの人生の来世(さき)が明るいものだと信じて……。
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