竜使いの少女

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竜使いの少女

「キーラ、そんなに暴れないの!  綺麗にしてあげてるんだから」 「キィー!」 私の声に応えるように、キーラは翼をばたつかせて楽しそうな高い声を上げる。  私は、湖の(ほとり)で体長3メートルほどの若いメスの竜を洗っている。この子は、私が初めて卵から育てた子。だから、とてもかわいくて愛着もある。でも、来週にはお別れだ。だから、最後に念入りに翼の付け根まで丁寧に綺麗に洗ってあげる。  私の家は、代々、竜使いをしている。竜を育て、飼育すると同時に、人を乗せて飛べるように訓練をする。そうして安定して飛べるようになる3歳頃、新たな飼い主の(もと)へと売られていくのだ。  このキーラは、来週、このエドヴァルド王国の王城に売られることが決まっている。キーラのように翡翠(ひすい)色に輝く竜は珍しい。一般的な深緑(しんりょく)にくすんだ竜と違い、値段は10倍になる。それでも、欲しいと言う貴族や豪商が後を絶たないが、父が、この竜はアリウス王子にこそ相応(ふさわ)しいと言うので、王城へ献上することが決まった。 来週、アリウスに会える。 どうしよう。 ドキドキする。 向こうはもう覚えてるわけないのに。 幼い日に数時間遊んだだけの竜使いの娘のことなんて。 それでも、私は一目でもアウリスに会いたいと思ってしまう。 それは、幼い日の淡い初恋……
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