174人が本棚に入れています
本棚に追加
私はアウリスと共に外へ出る。
「王子は、竜に乗るのは、初めてで
いらっしゃいますか?」
私が尋ねると、アウリスは眉間にしわを寄せた。
「もしかして、レイナは忘れちゃった?」
なんて答えればいいんだろう。
あんな子供の頃に1日遊んだだけの思い出を、まさか王子が覚えてるなんて。
「いえ、覚えております。
その節は、幼かったとはいえ、大変失礼を
致しました」
私は、深々と頭を下げる。
「失礼なんてされてないよ。
むしろ、楽しかった。
ねぇ、あの時の約束、覚えてる?」
「約束って……」
まさか、あのふわっとしたプロポーズのこと?
「レイナは、俺を名前で呼んでいいって
言ったはずだけど?」
あ、そっち?
……勘違いなんて、恥ずかしい。
「覚えておりますが、分別もつかない子供の
頃のことですので……」
一国の王子様を呼び捨てにしてたなんて、不敬罪に問われてもおかしくないのに。
「それでも、俺がそう望んだんだから
いいんだよ。レイナは、今後、何があろうと
俺を名前で呼ぶこと。分かった?」
そんな……
「他の方に聞かれたら、私が叱られます」
「俺がいいって言ってるんだから、他のやつが
どうこう言う必要はないだろ?」
いや、でも、もう少しご自分の立場を考えていただかないと……
「そうはおっしゃいましても……」
「分かった。レイナの立場もあるだろうから、
普段は王子でもいいことにする。でも、
2人の時は、名前で呼ぶこと。それなら、
いいだろ?」
どう見ても、アウリスは折れそうにない。
はぁ……
「かしこまりました」
「それから、その敬語も禁止。
昔のレイナみたいに、普通に喋ってよ」
それこそ、無理!
「いえ、それは……」
「なんで?」
なんでって言われても……
「それはやはり、
王子でいらっしゃいますから……」
「レイナの前では、ただのアウリスだよ」
うぅ……
「分かりました。
そうできるように努力します」
最初のコメントを投稿しよう!