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奈津の病室の前で立ち止まる。
病室に入り奈津のベッドのそばに行き、カーテンの中に入ると小さな息を繰り返す奈津が寝ていた。
20年と過ぎた月日を感じさせるような表情は見られない。
奈津の顔は付き合っていた頃と変わらず透き通った白い肌をしていた。
声をかけたら起きてくれるのではないか?
その寝顔を見つめていると奈津の瞼が震えていた。
「幸人…」
小さな声で奈津は俺の名前を呼んだ。
そばにより見つめていると苦しそう呼吸をする奈津の目から涙がこぼれた落ちた。
俺はそっとその涙を指先で払う。
無意識の内にその小さな唇に微かに触れるキスを落とした。
奈津の震える指先に手を添えて包む。
すると奈津がゆっくり瞼をあけた
俺は思わず奈津の名前を呼んだ
「奈津…」
ゆっくりと瞼を開けた奈津は
「ありがとう…」
小さな声だったけど、しっかり聞こえたんだ。
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