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その日の夜
奈津に会い行ったその日の夜空は真っ暗な空に煌々と光る月に霧がかった雲に包まれ神秘的だった。
おぼろ月というのだろうか。少し湿り気のある風がカーテンを踊らせていた。
寝ている奈津の小さな唇と細くなった指先や手の温もりがまだ肌に残っている。
そして幸人と呼んだ声がまだ鼓膜に残っていた。
疲れているのに寝付けない体を持てあまし、何度も寝返りをうつ。
そのうちにウトウトと浅い眠りの波にのまれていった。
「幸人…ありがとう…」
耳元で囁く小さな声が風と共に届く。
柔かな肌の温もりを感じて、うっすらと瞼を開けた。
奈津がふんわりと微笑み、俺にキスをした。
俺はそれに答えるように奈津の体を引き寄せキスを重ねる。
繰り返すキスで濡れた唇をもっと感じたくて深く舌を絡めてキスを落とす。
引き寄せた奈津の体は何も身に着けていなくて、あの時と変わらない柔かな肌を感じた。
俺の上にいた奈津が優しく触れる。
奈津が触れるたびにその感触を思い出す。俺が奈津に触れるたび奈津は憂い帯びてゆく。
すでに射きりだっていた俺自身を奈津は自分の中へと導いていった。
俺の上でゆっくりと揺れる乳房と淫らな腰つきに心乱された。
「奈津…」
「幸人…大好き…」
繰り返し呼ぶ奈津に「愛している」
俺は呟いた。
意識が浮上して体を起こすと、奈津は居なかった。
奈津は最後に会いにきたのだろうか?
夢の中で会いに来た?
自分の汗ばんだ体が夢のように思えなかった。
それから3日後…
奈津が空へと旅立った。
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