ある雨の日

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 俊介は昔から交友関係が広く、いつもクラスの中心にいる人気者。  旅好きな俊介はよく海外旅行に行っていたのはSNSから知っていたが、今まで一緒に旅行に行ったことはなかった。  しかし、現地の女の子に会うとは、あまり社交的でもなく、交友関係の広くないぼくにとってはとても新鮮だった。 「その友達っていうのは大学生とか?」ぼくは俊介に聞き返した。 「いや、大学は卒業して今は社会人かな。」俊介は当然のように返す。  しかし、現地のOLとどうやったら一人旅で知り合うのか。ぼくには理解できない世界だ。 「確かに一緒に旅行行ったことないし、卒業旅行っていうので悪くないね。」ぼくは即答した。  別に女の子の友達にそそられたわけでも、台湾という国に魅力を感じたわけでもなかったが、なぜか湧き上がるような興奮を感じた。 俊介がぼくの胸の高まりを察したようにニヤつきだし、話を続けた。 「おれの友達が色々遊びに連れて行ってくれるって。台湾はメシも美味いし、結構可愛い子多いし。日本人メチャクチャモテるから。」  二十二歳にして海外旅行未経験のぼくには、こんなに近い台湾でさえ縁遠い存在だった。 「そうなんだ?なんで日本人モテるの?」 「台湾人は日本の文化とかTVとか好きだから、めちゃくちゃ親日国なんだよ。」  理由になっているようでなってないなって心で思ったが、異国でモテるなんてこの時のぼくにはどうでもいいことだった。
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