ある雨の日

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 ぼくには付き合って二年半になる彼女がいる。名前は美雪、大学で知り合った同級生だ。  高知の実家から上京、東京でメガバンクに就職を決めている、家庭教師のアルバイトをするような少し強気でテキパキした、いわゆる出来る女子。  おっとりマイペースなぼくには丁度いい女性だった。  出会いはサークルの飲み会だった。ジェイムス・ボンドつまり「007」が好きだという共通の話題から意気投合し、美雪から交際を申し込まれた。  当時、まだ女性と付き合う経験がほとんどなかったぼくには衝撃的なことで、断ってしまったが、何度もアプローチされ交際に発展した。 「わかった、わかった。じゃー許可とったら予約しよう。」 「そういや、お前って美雪と付き合ってどのくらいだっけ?」 「もう二年半かな。一年から付き合っているからね。」 「二年以上か。飽きない?そんなに長く付き合って。」  俊介はいわゆるプレイボーイ。ぼくとは正反対のタイプの男だ。付き合いがよく顔が広い。しょっちゅう彼女も変わる。でも、嫌味のない、本当にいいやつなんだ。かくにも、ぼくたちの出会いも高校の入学式に俊介から声をかけてくれたのが始まりだった。 「飽きるってよくわかんないけど。美雪は真面目だし、しっかりしてるし、おれには勿体ないくらいだから。」 「お前も真面目だな。卒業したら結婚するの?」
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