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真藤君は、ただひたすらに笑っていた。
「……これ……真藤君のおかげ……?」
蚊の鳴くような声で私は彼に尋ねる。
今の状況的に、それくらいしか考え付かなかった。
「違う。違うよ。これは俺のおかげなんかじゃない。寧ろ俺は――全部知ってた。それも、けっこう前から……でも、何も出来なくて、あの人たちが怖くて怖くて。結局俺は、何も出来なかった。何も出来なくて、本当にごめん」
彼の笑っていた顔は申し訳そうな顔になっていた。
――私は、こんなにも優しい人に出会ったことがない。
「君の……おかげなんでしょ……? 君は、彼女たちに――何をしたの?」
「君も頑固だな。君と同じことをしただけだよ。――送った花は違うけど……」
「どの花を送ったの?」
生憎、私もかなりしつこかった。
「……シロツメクサ。――花言葉は『復讐』。彼女たち、不良だけど頭はそこそこいいから、意味を察したんだろうね」
シロツメクサ……花言葉、『復讐』。
なるほど。『復讐』という花言葉を持つシロツメクサを私が送ったと彼女たちは勘違いして、私のことを恐れていたのか。
流石に、真藤君がやったとは思わないからね……。
クラス内での真藤君はもっと物静かだから。
「あの、教えてほしいんだけど……私には、どうして『悲しい思い出』の花言葉を持つ彼岸花をずっと送り続けたの?」
「違う! そういう意味で送ったんじゃなくて……やっぱり、言わない」
そう言った時の真藤君の顔は少し赤らんでいるように見えた。
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