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僕は、無力だ。
「 ヴィーラ、家族を頼んだよ 」
つい最近まで、家族5人幸せだったんだ。
「この家から一人、戦地へ行く者を出せ 」
起こるはずのない場所での地震や季節の滅亡。加えて謎の疫病。急に世界がおかしくなり始めて、各国で戦争が増えた。この国でも兵役制度が復活したのと同時に、兵隊が我が家へもやって来た。
「 出さねば、反逆罪と見做し一家全員を牢へぶち込むぞ 」
その言葉に青ざめる家族。
父さんだけが何故か冷静で、一歩前へ出て
「 私が行きます 」
と、一言告げた。
兵隊が去れば、襲ってくるのは、優しい父を失うかもしれないという、恐怖。
母は嫌だと泣き崩れ、幼い妹達はその声に驚いて泣き叫ぶ。
12歳の僕が変わりに行くと父に願い出れば、初めて父に殴られた。
「…命を、大切にしなさい」
そう言う父の背中は悲しく、儚く。
殴られた頬を抑えて、殴られた痛みなのか、悲しいのか、大粒の涙が頬を伝った。
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