12話【告白】

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 互いに告白を済ませたけれど、色々とやらなくてはいけないことがある。 『ブォォオオオッ!』  ドライヤーの音を部屋に響かせる中、俺はチラリと雪豹さんを見る。  俺の服に着替えた雪豹さんは、季節はずれにも扇風機の風を浴びていた。ちなみに風力は【強】だ。  そのまま冷蔵庫と冷凍庫から雪を取り出し、手からグングン吸収している。  ドライヤーの電源を切り、俺は縮こまっている雪豹さんに声をかけた。 「雪豹さん」 「ひゃいっ!」  丸まっていた背中が突然、ピンと伸ばされる。裏返った声で返事をした雪豹さんは、ぎこちない動きで俺を振り返った。  ……そこまで意識されると、こちらも緊張してしまうのだが。 「服、乾かしました。皮膚も問題ありません」 「あ……えっと、あ、はいっ! ボクも、あの、必要な雪は摂取しました。えっと、体もしっかり冷やして、ます……っ」 「そのようですね」  ペタリと床に座り込んでいる雪豹さんに近付き、俺も床に座る。  ジッと見つめると、雪豹さんの視線がせわしなく彷徨った。けれど意を決してくれたのか、俺を見上げてくれる。  やるべきことは済ませた。だから俺は、やっと言いたいことを言える。 「――抱き締めて、いいですか」  濡れた服と体では、雪豹さんに触れない。雪豹さんも雪豹さんで、何の対策も無しに抱き合うのは自殺行為だと思ったのだろう。だから扇風機で体を冷やした筈だ。  しっかり見つめてそう確認すると、雪豹さんの視線が外される。 「…………っ、は、ひゃい……っ」  今のどこでどう噛んだのか全く分からない。  しかし、可愛い。これが俗に言う【惚れた弱み】というものだろうか。 「失礼します」 「っ、うぅ」  優しく、砕いてしまわないよう、丁寧に。  両腕で雪豹さんを抱き締めると、雪豹さんが小さく身じろいだ。しかし、嫌がっているわけではないらしい。  現に雪豹さんは、背中に腕を回してくれている。 「好きです、雪豹さん」 「あ、あぁぁ、は、はい……っ」 「雪豹さんも言ってください」 「ひぇっ! あ、あの、す、好き、ですっ」  ム、いけない。毛先から水滴が垂れてきた。  体を離し、俺は雪豹さんと距離を取る。雪豹さんは少しだけ悲しそうな表情をしていた気がするけれど、こればっかりは仕方ない。 「来年も、俺のこと……診てくれますか」 「み、見ますっ! いっぱい見ます!」 「い、いっぱい……あ、ありがとうございます」  今年の診察はもう終わってしまったけれど、来年も通院する。  つまりまた、俺は雪豹さんと会えるのだ。 「これからまた、よろしくお願いします」 「こ、こちらこそ……っ!」  もっと触れたいという気持ちは、正直あるけれど。  ――これから先、ずっとずっと……何度でも会えるのだから、ゆっくり進めていこうと思う。
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