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Episode 1
「君、ちょっと頼みがあるんだけど!」
と、昼休み、学校の校舎裏側の焼却炉までゴミを捨てに来た、中学2年生の伊藤秀樹は、突然、声をかけられた。声のしたほうを振り向くと、通学途中で、たまに見かけたことのある、3年生の塩谷という男子生徒が、校舎の陰に立っていた。
「えっ、なんですか?」
と、秀樹が言うと、
「女が待っていると言って、あの体育器具室でたむろしている芹沢を連れてきてくれ。」
と、上級生の塩谷は言った。
「ここには、ほかに誰もいませんが…」
と、秀樹が言うと、
「そんなことは気にしないで、とにかくそう言って、あいつを連れてきてくれ!」
と言う。塩谷はまじめで、温和しそうな生徒だったこともあり、秀樹は、塩谷の言うとおりに、体育器具室のほうに向かって歩いていった。体育器具室に行く前から、秀樹は嫌な感じがしていた。なぜなら、いつも体育器具室には不良どもがたむろし、タバコを吸ったり、普通の生徒を連れてきては金銭を巻き上げたり、ぶん殴ったり蹴りを入れたりサンドバッグ代わりにしていた。秀樹が体育器具室の入り口につき、中を見ると、もうもうとタバコの煙が漂い、学ランを威圧的に見えるように加工した異様な風体の不良ども5~6人がいた。秀樹が、
「芹沢さん、いますか?」
と言うと、たむろしている連中のなかでも、ひときわ上背のある上級生が、
「おい、てめ~、オレになんのようだ~!」
といいながら、寝そべっていたマットから身を起こし、秀樹のほうに向かって歩いてきた。秀樹が、
「上級生の女の人から、校舎裏の焼却炉のところで待ってるから来てくださいと、芹沢さんに言ってください。って頼まれました」
と言うと、
「おうっ!」
と言いながら、ご機嫌な様子で、焼却炉のほうに向かって歩き出した。途中で、上履きから靴に履き替えた芹沢からは、だいぶ離れて歩きながら、秀樹も靴に履き替え、焼却炉のほうに向かって歩いていった。
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