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「いや、スイートピーって、普通、卒業式に渡す花じゃないかなーって。」
「え?そうなんですか?」
「なんか、そんな花言葉がついていたような。」
「ちょっと調べてみます。」
加奈子はスマホを操作し、スイートピーの花言葉を検索した。
「ありました。えーと、スイートピーの花言葉は、門出、優しい思い出、だって。」
「うーん。微妙。」
神妙になる二人のやり取りを聞いても、何が問題なのかマネージャーはわからなかった。
「えー、大丈夫じゃないですか?」
「ばか、花を贈ることが大事なんじゃないのよ。花を贈る気持ちが大事なんじゃない!」
ボーっと生きてんじゃないよ!と佐藤はマネージャーへの言葉の語気を強めた。
「気持ちは、ちゃんとこめましたよ。」
「卒業式に贈る花をデートで渡すことのどこに気持ちがこもっているのよ!」
「だって、この花束、一万円もしましたからね。」
「ばか!お金じゃないのよ!」
ノンキなマネージャーに佐藤の口調はキツくなるばかりだった。
それを見て冷静に話しましょうと、加奈子が割って入った。
「マネージャーが花言葉をどうでもいいと思っていても、相手が花言葉にこだわる人だったら、どうするんですか?」
「その時は、そのあとに予定している五万円のディナーで挽回しますよ。」
結局お金じゃねえか、と佐藤は憤りを感じた。
「いい?マネージャー。スイートピーの花言葉は『優しい思い出』でしょうが。」
「はい。」
「あんたは、デートの相手に『お前は思い出だ』と言った後にチューをせがむ、そんな男なんだよ!」
「いや、そんな!」
「いーや、そういうことです。」
佐藤の強い口調に、マネージャーは呆れ半分で加奈子に助けを求めた。
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