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勢いよくスタジオのドアが開いて、佐藤が元気に出勤してきた。
「おはよ~、加奈子さん。」
「あ、おはようございます。佐藤さん。」
「おはよ!マネージャー。」
マネージャーは返事せず。メソメソ泣いていた。
「どうしたの、マネージャー?」
佐藤が話しかけてもマネージャーは返事をしなかった。メソメソと泣くばかりだった。
そこへ加奈子が声をかけてきた。
「ちょっと!佐藤さん!こっちこっち!」
「加奈子さん、えへへ!今日はメロンパン買えました。」
嬉しそうにメロンパンを取り出す佐藤さんを、ま、一旦こっちにおいといてと、加奈子は佐藤に話しかけた。
「そんなことより、マネージャーですよ。」
チラッと振り返ると、まだ泣いている。
「ああ、なにあれ。朝から辛気臭い。」
「じゃあ、聞いてないんですね?」
「え!なになになに!」
佐藤は、なんだか面白そうな話が聞けそうだとウキウキした。
「マネージャーの昨日のデート。それが、デートの相手、英会話の教材のセールスマンだったらしくって、」
「ほー。」
「なんか、百万円する教材を買わされたらしいんですよ。」
「ほー、百万円。」
「それきり連絡が取れないらしくって、朝から落ち込んでいるんです。」
「あらら。」
「本当、あらら、ですね。」
他人の不幸は蜜の味。佐藤は自分のゲスさをほんのり反省しつつ、ウキウキする気持ちを抑えきれなかった。
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