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晴哉の姿が見えなくなると、私はじょうろを花壇の奥側に置く。その時、花壇の傍に雑草に紛れて花が咲いていることに気がついた。
花を観察すると赤色のタンポポのように見える。花は小さく細い花弁が集合しているようだ。
この花は何だろうと思いながら、とりあえず後で調べればいいかと思い、その場を離れることにした。
家に帰り部屋に入ると、オーディオプレーヤーの電源をつけて耳にイヤフォンをつける。耳からは今、流行りのロックバンドの曲が流れてくる。
歌を聴いていると、名前が分からなかった花のことを思い出していた。スマートフォンで赤いタンポポと調べるとコウリンタンポポと表示される。
やっぱりタンポポの仲間かと思いながら、ついでに花言葉を調べると、眼力、目ざとい、という言葉が出てきた。
しかし、花の画像をよく見ると花弁の形や色が学校で見たものと違って見えた。
花の解説をよく見ると別名でエフデギクと書かれている。エフデギクで再検索するとカカリアという花の名前が検索結果に表示される。
どうやら自分が見たものはこの花らしい。さっきの流れで花言葉を調べると、秘めたる恋、控えめ、という言葉が画面に表示された。
それを見た瞬間、心臓が止まったように感じた。どこかこの花が自分に似ているような気がしてならない。自分に自信を持てないことや恋する気持ちをひた隠すように接する心境が、カカリアの花言葉と合致しているように思えた。
晴哉は、カカリアの花を見つけることが出来なかった。それは無理もないことだ。花壇の中に咲いていた訳では無いし、雑草に混じって一緒に刈り取られてもおかしくないような花だから。
自分もカカリアみたいなものではないだろうか。きっとこのままでは、晴哉に自分の想いが届くことは無いだろう。
イヤフォンで聴いていたはずの音楽はまるで、音が鳴っていたのかと思うほど耳に入ってこなかった。
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