秘めたる想い

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「あれ?」  学校の花壇の前に立っている私は、目の前の状況を見てその言葉が自然と口から漏れていた。  横長のレンガブロックに囲われた花壇には、細々とした雑草が多く生えている。花達はきっちりと咲いており綺麗だとは思うけれど、雑草がこれだけ多く生えているとせっかくの魅力が半減しているように感じられる。  とりあえず、花壇の横に置いてあるじょうろの取っ手を掴んで水を汲みに行く。  花壇全体に水をしっかりと撒くため、膝頭くらいの高さがあるレンガブロックの上に登り、その上を歩いて水を撒いた。  土を湿らせた後、雑草を引っ張ると、いとも簡単に抜けていく。 「何してんの恵奈」  声の発せられた方向を見るとユニフォーム姿の晴哉がこちらを見ていた。 「見てわかんないの? ただの草むしりだけど」 「それは見ればわかるよ。なんで夏休み中にそんなことやってるわけ」  挑発するような言葉を言われた晴哉は、少々むっとした顔で理由を尋ねてくる。 「私、栽培委員だし」 「えっ、栽培委員って夏休み中も活動してんの?」  晴哉が驚いた顔を見せると、私はすぐにそれを否定した。  「違う、違う。本当は夏休み中の世話は先生がやるの。だけど吹奏楽の部活終わりに寄ってみたら、草が結構生えてたからやってるだけ」 「そういうことか。委員会の顧問って誰よ?」 「萩谷先生だけど」  晴哉が少し考える素振りを見せる。思い当たる節があるのか若干笑っていた。 「なるほどね。確かにそんな感じだな」  萩谷先生は話が面白くて生徒から人気がある先生だ。私も実際、先生の中では好きな方だけれど、少々忘れっぽい所は問題である。 「晴哉はサッカー部の練習終わりなの?」  その言葉を聞くと晴哉は、右手に持っている鍵を見せつけるように差しだす。 「そう。体育倉庫の鍵返して終了」  その言葉を言うと、職員室に向かうため歩きだす晴哉を後目に私は草むしりを続けていた。
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