涙の誕生日

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師走に入り、ウェスター国にも本格的に冬がきた。 さらに年の瀬ということもあり、皆がバタバタとせわしない。 ……その日は、自分の誕生日だった。 自分は、今年の四月末のウェスター王族にまつわる怨霊事件が解決するまで、幼少の記憶を無くしてしまったゆえに。 自分の年齢も知らなければ、誕生日なんて勿論のこと知らなかった。 しかしその後に記憶が戻り、自分の年齢も誕生日も思い出すことが出来た。 五月のイサキの誕生日も、八月の王の誕生日も、九月のシンラの誕生日も。 今年は寂しい思いをすることなく、おめでとうを伝えられた。 『今年のアイリの誕生日は。 パーッと派手にやろうな!』 シンラの誕生日の際に彼がそう言ってくれて、えー、いいよ普通でー、とか返しながらも内心物凄く嬉しかった。 そして、迎えるその日。 「……ごめんアイ姉! めっさごめん! も、本っ当ごめん!」 「や、いやいやそんな。 気にしないで」 その日はクリスマスが近い平日で。 自分達戦師(いくさし)は、クリスマスだからといって休みをとる訳にはいかない任務の都合上、イサキとモエちゃんのカップルは今日にクリスマスデートとなってしまったらしい。 さらにイサキの本日の外勤にあたっていた任務は、自分が担当することになった。 まさかの逆プレゼントをされることになってしまったのだ。 「でもさ、今日はお邪魔虫はいないから。 シン兄と二人で、とびっきりのバースデーにしてよ。 あ、これ俺からのプレゼント、先に渡しとくね! 後で開けてみて」 彼は自分にかわいくラッピングされた薄い箱を手渡し、イーステン国勤務の彼女の元へと行ってしまった。 ちなみに彼らの本日の予定は、イーステンにてまずは映画を観て、フードコートでお昼を食べて、ショッピングモールをブラブラして、夕方からは綺麗と評判のイルミネーションを一緒に見に行くらしい。 照れ隠しからかイサキは、モエちゃんとのデートを事細かく報告してくるのがなんとも可愛い。 それをシンラと、微笑ましく生暖かい笑みを浮かべながらいつも聞いている。
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