涙の誕生日

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今日は学業はお休みの日だ。ウキョウさんから課された本日の自分の任務は、役所に書類を持っていって確認してもらい、その返答を封書にてもらうこと。 役所が書類を作成している間に私設の道場のトップが集まる会合があるから話を聞いてくるように言われている。 勿論後で報告のレポートも書かなければいけない。 ウキョウさんいわく、昔、私設の道場を運営していた自分のお父さんもこの会合に参加していたそうだ。 そんな境遇で育った自分に幾分か配慮してくださったのだろう。 加えてイサキの分。 ウェスターの小学校の校長の定例の会議があるとかで、そこで話を聞くように言われている(勿論報告レポートつき)。それと幼稚園三ヶ所の通常訪問。 嘘みたいだが、時間が被らない。 会議が二件も入っているのに! さすが段取りのプロフェッショナル、ウキョウさん。 まず、役所。 次いで幼稚園を一件訪問。 時間を調整して校長会へ。 本日のスケジュールはまるで分刻みだ。 校長会をようやく終え、ああ今頃あの弟分は魔女っ娘モエちゃんと楽しくランチタイムなのかな、などと思いながら。 自分はコンビニのミックスサンドをマスカットティーで胃の中に流し込む。 次の私設道場のトップ会合まであまり時間の余裕はない。 コンビニで御手洗もすませ、会合の場所である公民館に向けて歩いていた時。 突然、何の前触れもなく目眩がした……しかも結構きつい。 思わずしゃがみこんで片手を地につき、もう片方で頭を支える。 地面が揺れてるんじゃないかと思った。 「……な、何……?」 おさまったかは分からないけれど立ち上がってみる、真っ昼間の公共の場でいつまでもしゃがんでいたら、道行く人に不審がられる。 ……目の前の街並みは、いつもと変わらない、やはり地震などではないらしい。 車が走り、仲のよさげな親子連れがしゃべりながら通りすぎ、十二月の冷たい北風は吹き抜けていく。 「……疲れてるのかな……」 なんだか急に、倦怠感が襲ってきた。 しかし、未だ任務中。 さっさと終わらせないとそれだけ帰りが遅くなって、おそらく先に帰宅しているだろうシンラを待たせてしまうことになる。
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