涙の誕生日

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「おう、おかえり。 誕生日おめでと! ……ちぇ、クラッカーやり損ねちまった」 シンラが、にっこり笑って出迎えてくれた。 「ありがと。 ……電話、何? 何かあった?」 自分、本日の任務を体のだるさから勝手に切り上げてきた上、未だに連絡が出来ていないのだ。 「ああ……ケイゾウから。 ん、ちょっとな……」 彼が、目をそらして口をもごもごと動かしたのを見て、ああやっぱり今日はついてないな、と改めて実感した。 「いいよ、言って。 さっきからなんか城内ざわざわした感じしてるし。 気になってたの」 「……ん……アカネがな。 倒れたって」 「……え?」 「顔や体にいっぱい赤い発疹がブツブツ出てさ。 いきなりの高熱で、なんか全身がすっごい痛いらしい。 当直の医療班が診察してもなんだか分からないらしくて。 これからメグさんに診てもらうらしいぜ……でな、このアカネの症状。 なんか……昼間っから大なり小なりあるけど似たような症状で倒れたって人が、病院に卒倒してるらしいんだ。 とりあえず『赤い発疹と全身の激痛と高熱』、なんだって。 まだパンデミックって訳ではないんだろうけどさ……今、大将やウーさんが、応対に追われてる」 ああ、だから彼らに連絡がつかなかったのか。 「アイリは、大丈夫なのか」 彼がふと聞いてきた。 「え?」 「いや……俺。 昼くらいに、一瞬すんごい頭痛がしてさ……立ってらんねえぐらい。 しばらくしたらとりあえずひいたんだけど、ちょっとどうしようかと思った。 その後なんとなく、ずっとかったるい感じしてるし」
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