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10日目
今日のお昼は写真映えスポットについての話題だった。一人で探すのに限界を感じていたところだったし、何も一人で探す必要はないんだと気付いたわけで。折角こんなに違う種類の人間が集まるんだし、いろんな意見が聞けるかもしれないと思った。
「原宿とかオススメだよ」
徳人の意見は、俗に言うインスタ映えスポットが多く、俺が最初に調べた時ネットに沢山あった、人間を被写体とした時効果を発揮する場所が多かった。でもいい写真というより、映っている人の日常が映えるように見えるという意味合いを持っている場所の方が多く、俺の求めている写真映えスポットとは違った。
一方宮下さんは写真に疎く、そういう場所を知らないとのこと。すごく意外だった。
「プリはよく撮るけど風景は撮らないな。後はカルトが言ったみたいにインスタ映えとかじゃん」
「ん? 誰が言ったみたいって?」
「カルト。ノリが軽い人でカルトじゃん」
「あ! 俺の事?! あっちゃんニックネームのセンスねぇ〜!」
「うっざ! もうウザトって呼ぼうかな」
「いやそれはやめて!」
「でもカルトってどうなの。俺のワカマより酷くない?」
「じゃあケイト」
それならもう徳人って呼ぶのと変わらなくないか……? と思ったけど黙っておいた。ワカマにしろケイトにしろ本人の名前が一文字しか残ってないのがなんとも切ない。
「でも二人ならそういう場所に詳しいと思ったんだけどなぁ」
「映は分かるけど風景とか撮らねーもん」
「てかユキの撮った写真見たけど、鳥とかアリとか風景ですらなくね?」
まあ日常の何気ないものを撮ってたからそうなるんだろうけど。そうなってくると、そもそも気合い入れて写真を撮るスポットに行くこと自体が間違いなような気もする。
「えー、ユキちゃんの写真俺にも見せてよ!」
「いいよ、えっとね」
そう言って染川さんがスマホのカメラロールから開いた写真がまさかの。
「え? なにこれとーま?」
「あたしにも見せて。え? ブッ」
「わぁっ! ちょっとまってそれ!!」
俺は咄嗟にスマホを奪い取った。そこに写ってたのはこの前のボートから降りる時のへっぴり腰な俺だった。
「なんでこれなの!」
「面白いかなあと思って」
「フフッ! ユキちゃん! センスある、面白い!」
「人の情けない姿で笑い取らないでよ!」
「ごめんごめん」
ひとしきり笑った徳人が、
「こういう写真が良いんだったら動物園とかにすれば? 動物も撮りつつ面白いとーまも撮れっかもよ?」
と言った。ここ最近で一番のナイス提案だ。
「動物園か! それいいじゃん。 染川さん今度動物園にしようか」
「えへへ、動物園かぁ、何年ぶりだろ、楽しみ」
こうして今週末は動物園に行くことが決定した。動物園なら割と庶民的だと思うし、徳人にしてはなかなかいい提案だったんじゃないだろうか。動物園なら醜態晒すこともないだろうから安心だ。あんなネタ画像が増えるのなんかたまったもんじゃない。
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