17日目

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17日目

夜な夜な色んな童話を調べ、題材を赤ずきんちゃんに決定した。リメイクと言っていたけど、時間も時間だし、本編から大きく話を変更するつもりは無い。 昼休みに集まって、その事を江永さん達に伝えた。 「赤ずきんちゃん。いいチョイスだと思いますよ。話も簡単ですし、演技もしやすいんじゃないでしょうか」 江永さんはそう言ってくれた。 「問題は誰が何役をやるかじゃね?」 「やりたい希望があれば聞くよ。なるべく演じやすいように当て書きするつもりだし」 「私、赤ずきんちゃんよく知らないんだけど、どんな人が出てくるの?」 自分では赤ずきんちゃんはメジャーな童話だと思っていたけど、染川さんは知らないようだった。知っていても、五人分の配役を分からない人も居るだろう。情報のすり合わせも兼ねて、俺は赤ずきんちゃんの説明をすることにした。 「キャストだけ大まかに言うね。主役は赤ずきんちゃん。それから、病気のおばあさんと赤ずきんちゃんのお母さん。この二人は出演シーンが少ないから、裏方を手伝いつつやる感じで。それと嘘つき狼、森の狩人の五人かな。狼と狩人は男性キャスト、赤ずきんちゃんとおばあさんとお母さんが女性キャストになるよ」 「オレ、狩人やりたいっす!」 俺の説明を聞いて、安丸くんが元気よく立候補した。 「いいと思います。安丸くん向けでは無いでしょうか。宮下先輩は希望ありますか?」 「えっ、あたし? なんでもいーけど」 「では私と宮下先輩でおばあさんとお母さんをしましょう。裏方も兼任するのですから、ある程度演劇を分かってる人の方がいいと思いますから」 「そうなると、私は狼さんか赤ずきんちゃんちゃん?」 「いや、なんでだよ。狼は男性ってワカマ言ったじゃんか」 宮下さんがすかさずつっこむ。染川さんは天然でこういうボケをかましてくることがある。 「え〜! じゃあ私が赤ずきんちゃん? いいの、主役でしょ? 私演技したことないよ?」 俺と宮下さんと江永さんは、同時に染川さんをじっと見た。おばあさんの耳はどうしてそんなに大きいの? と無邪気に問いかける染川さんが簡単に想像つく。 「適任ではないですか?」 「間違いねーだろ」 二人も同意見だったらしい。 「ではみなさん、童話赤ずきんちゃんを軽くでも構わないので一度読んできてください。それから顧問の話ですが、私のクラスの副担任である矢崎先生が担当してくださることになりましたので、近々挨拶に伺います。安丸くんと若島先輩は残りの三年生枠を早く確保してください」 江永さんは一度も噛まずにスラスラと今後の行動を話した。ホントにしっかりしている…… 「演劇部始動だね!」 「始動ッ! すね!」 ハイテンション組は今日も楽しそうだ。 何より、この活動を通して、染川さんが楽しい事を見つけられたんじゃないかという気がして、それが少し嬉しかった。
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