2日目

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2日目

俺たちの交際? はまず連絡先の交換から始まった。 初歩の初歩すぎない? 色々順番がおかしい気もするけど…… あの後お互い家に帰って、特に連絡することも無く次の日を迎えた。 登校中、俺は悶々とこの先どうしようか考えていた。染川さんとは本当に接点がなく、あって去年の文化祭実行委員くらいだけど、それですら三言喋ったかどうかってレベルだ。去年も今年もクラスは違うし、部活も違う(というか染川さんの部活すら知らない)。大体、染川さんって顔も結構可愛い方だし、こんな中の中……いや、盛った。中の下の俺が彼氏で良いのか? 恋愛にも疎いし洒落っ気がある訳じゃないし、頭が良いわけでも運動ができるわけでもない、至って普通の取り柄のない男子。全く接点のないそんな奴が彼氏でいいはずないよな。じゃあ、あれってからかわれただけ? と色々考えているうちに学校に着いてしまった。クラスが違うので、意図的に顔を出さなきゃ丸一日会わない可能性すらあるし、挨拶くらいは行った方がいいよな? でも、もしからかわれてるだけなら行っても恥をかくだけだ。せめて隣のクラスに仲のいい友達でもいたら、そいつに会うのを口実に染川さんの様子を見に行けたかもしれないが、生憎交友関係の浅い俺ではそんな都合のいい友達はいない。 「あ、若島くん。おはよう」 「えっ? わあ?! そ、染川さん、おはよう?!」 俯きながら色々考えていたせいで、廊下で染川さんに出くわした事に気が付かなかった。ただ挨拶しただけなのに、随分慌てふためいてしまった。 「え? 誰?」 横を歩いていた染川さんの友達と思われる、ギャル感溢れる雰囲気の女の子がそう聞いた。 そりゃそうだ。違うクラスのほとんど喋らない男子相手に挨拶してたら不審がられる…… 「隣のクラスの若島くんだよ。私の退屈しのぎに付き合うために昨日から彼氏になってくれたの」 染川さんが躊躇なく交際宣言をかますので、俺は思わず硬直してしまう。染川さんの友達は、俺をチラ見した後、 「やっぱあんた変わってんね」 と染川さんに言った。 ちょっと待って、お友達さん。その変わってるって染川さんの性格について言ったんだよね? コイツ選ぶなんて変わってるって意味じゃないよね?! 悲しくなるからそっちじゃなくあってくれ。 「若島くん、家近いんでしょ? 今日一緒に帰ろうか」 「え、あ、はい」 硬直したまま口を開かない俺に、染川さんは不意打ちでそう言った。思わず片言に返事をしてしまったが、しれっと一緒に帰ることが決定してしまったようだ。 「じゃあ放課後ね」 染川さんは満足そうにその場を去っていった。 今のも込みでからかわれてるのか? これって俺はどう対応するのが正解なわけ……? この先上手くやって行けるのか、あまりにも不安すぎる……
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