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5日目
なんだかんだ言って染川さんとの話題は尽きない。それもそのはず、俺たちはお互いのこと何も知らないんだから、どんな事だって絶対会話に発展する。
他人からすればそれこそ内容は皆無かもしれないけど、全く知らない同士だから百パーセント新情報でしかないし、言わば相手を知る重要な手がかりみたいな所がある。
けれど悲しいかな、俺たちの共通点は今のところ、同い年で同じ学校に通っている人間って所くらいしかない。
責めるわけじゃないけど、染川さんと共通点を持てる人ってそうそういないんじゃないかと思う。趣味は無いし苦手なことも無い。特技は水彩画用の筆を触っただけでどこのメーカーのものか当てられること(謎でしかない)。
食べ物の好みなんて特に酷い。好きなものは水。理由は色んなものになれるから。嫌いな物は1度食べた料理全般。二回目は楽しくないから、だそうだ。お手上げである。
こんな感じで、染川さんの好みでは話を深堀出来ないけれど、俺の好みにすごく興味を示してくれるおかげで、なんとか会話は弾んでいる。
「へぇ、じゃあ明日土曜日だし、私も散歩ついて行こうかな」
俺が休みの日に散歩をすると言ったら、染川さんはそう言った。
これって実質初デートなのでは? そう思ったら散歩でいいのか?という気がしてくる。
「えっ、近所の公園だよ? いいの? もっと水族館とか、遊園地とか」
「そんな所にお散歩行くの?」
「散歩では行かないけど……」
「普段行くところにしようよ〜! 私公園好きだよ」
「えっ、公園好きなの?!」
何気ない会話からまさかの初共通点が見つかりそうで、俺は思わず食い気味に聞いた。染川さんは少し首を傾げてから
「まぁ、一人では行かないけど……絶対行きたくない場所って訳では無いかな」
と曖昧な返事を返した。一人で行かない時点で好きな場所かは怪しいけど。
「染川さんって難しいよね」
「んーそうなの? あっちゃんは単純だって言ってたよ」
そりゃ何年も一緒にいる幼馴染ならそう感じるのかもしれないけど。そこに至るまでは並大抵の人じゃ難しい気がする……
「でも公園なんて何年も行ってないから楽しみだな!」
「何年も行ってない時点で好きな場所ではないよね」
まあ染川さんのことだから、同じ場所に何度も行くってことはないんだろうけど。
「何回も頻繁に行く場所の方が少ないよ私は」
と思ってた矢先、そう言われた。
うん、確かに染川さんは意外と単純かもしれない?
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