7日目

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7日目

今日は日曜日。俺はフルタイムでバイトに入っていて、朝から忙しなく働いていた。一応出かけ前に染川さんにバイトだから反応出来ないと連絡しておいたけど、昼休憩にスマホを見たら結構沢山通知が来ていて驚いた。内容は殆ど一方的に壁打ち状態で、バイトが面白そうという話をしていたかと思えば、一人で公園に行ったけどそんなに面白くなかったとか、宮下さんに連絡したけど宮下さんもバイトだと言われた事とか、コロコロ話が変わっている。 一応「昼休憩になったよ」と連絡を入れてみたけど、休憩中に既読がつくことは無かった。 バイトが終わったあと「バイト終わりました」と連絡したけど、既読は付かなかった。休憩中に送ったものも見ていないようだったし、スルーしすぎて拗ねたのか?とも思ったが、俺は事前にバイトだと言っておいたはずだ。そこであの時の歩道橋が頭をよぎった。確か染川さんは退屈で自殺しようとしていた。俺が構わなかったから自殺してみたくなってしまったのでは?! 俺は慌てて自転車を飛ばし、例の歩道橋まで行った。とりあえずは普段通りで、染川さんも居ないし、事件があったような感じではない。ほっとしたところでスマホを見ると、染川さんから返事が返ってきていた。 「バイトお疲れ様〜! 暇だったので若島くんに習ってあちこち写真撮影してみました」 という返事とともに、いくつか写真が送られてきた。電線に留まるスズメ、白い欠片を運んでるアリ、道端に捨てられた煙草の吸殻、車用と歩道用の信号機が全部赤になってる瞬間……写真に収められてるのはどれも在り来りな風景だけど、何故かすごく魅力的に見える。 アングルなのか、フォーカスしている被写体なのか、映像に詳しくないので何がどういいのか説明出来ないのが残念だが、どれも見ていて面白いと感じるものが多かった。 「いい写真ばっかりだね! 写真の才能あるんじゃない?」 そう返すとしばらくして、もう一枚写真が送られてきた。それは、揺れるボートから降りるのが怖くて、係のお兄さんに支えなれながら何とか桟橋へ戻っている俺の写真だった。 「面白い体勢の若島くん」 こんなのいつの間に。絵文字も何も付いていない簡潔な文だけど、何となく向こうで鼻で笑ってる姿が目に浮かぶ。 「こういうのは撮らなくていいよ!」 「えぇ、面白いのはまた撮るよ〜」 改めて見返しても、感動的なへっぴり腰が本当に情けない。でも染川さんが面白がってくれるんだったら、情けなくてもまあいいかと思えた。 「写真って今まで撮ったこと無かったんだけど、撮ってみたら、若島くんが面白いって言った理由ちょっと分かったかも」 そんな返事が返ってきた。染川さんが面白いと思えることを見つけられたのが少し嬉しかった。 「じゃあ今度、沢山写真撮れる所とか遊びに行こう」 「いいね!」 言ってみたものの、沢山写真が撮れる場所って何処なんだろう。ネタ集めのために写真撮ってただけで写真が趣味なわけではないからパッと思い付かない。 「じゃあ来週の日曜日ね!」 場所も決まってないのに日にちが決まってしまった。俺は急いで写真映えスポットを探すことになった。
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