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8日目
「というわけなんだけど……」
あの後夜な夜な写真映えスポットを探したがピンとくるものがなかった。ネットで出ている情報は、基本的に人間が写った状態で映える場所が多く、ツーショットで映え! と言われても、なんか求めている写真スポットと違うのばかりだった。という事で限界を感じた俺は、同じクラスの徳人に頼る事にした。
青柳徳人というコイツは、中学一年の時同じクラスで知り合った。俺とは正反対な性格の人間で、最初は絶対友達になれないタイプだと思ってた。けれど、どういうわけか気が合って、居て苦にならなかった。チャラくてパリピで、名前の音の通りノリノリな奴。徳人と言うほど徳はないけど、ノリ人と書けば一発で人柄が伝わる。よくいろんな人と遊びに出かけてるし、写真映えスポットとか詳しいはず。
「てか、それ以前にさぁ、まだ染川さん呼びなの? そっちのが気になんだけど」
「え?」
唯一の頼りだと思ったのに全然違う話始める……でも確かに、一応恋人なんだし、苗字呼びは変なのか? かと言ってなんて呼ぶんだ? 向こうも俺の事苗字で呼ぶし……いきなり名前で呼んだら馴れ馴れしくないか?
「別にそれはいいんじゃ……」
「いやいやいやいや、良くないっしょ?」
良くないらしい……
「愛称呼びはカップルの特権じゃん! ゆきりんとかゆきぴとかゆーたんとかゆきにゃんとか呼んだ方がよくね?!」
「いや絶対無理」
そういう感じじゃないじゃん空気感?! そんなの提案したら絶対ドン引きされるに決まってる。というか俺も恥ずかしくて口に出したくない。
「言ったじゃん、俺たちそういう感じじゃなくて……染川さんの暇つぶしに付き合ってるだけだし、向こうが飽きたらこの関係も解消だってば」
「フーン。まあとーまはあーゆー子タイプじゃないもんね?」
「いや、タイプとかタイプじゃないとかそういう事じゃなくて……」
「あ」
不意に徳人が顔を上げる。俺もそっちの方をむくと、染川さんがいた。昼休みなのになんの用だろう? 普段は本当に朝と帰りにしか顔を合わせないから意外だった。
「どうしたの?」
「お昼一緒に食べようと思って! 若島くんはお弁当? 購買?」
「えっ? いいの? 宮下さんは?」
「あっちゃんも呼びたい?」
「え、いや、どっちでもいいけど……」
俺が曖昧な返事をしていると、染川さんはチラッと教室の方を見た。
「友達と食べてた?」
「いや、あいつは別に……」
「じゃあみんなで食べる?」
えぇっ……?
謎状況すぎる……
何故か俺と染川さんと宮下さんと徳人の4人で中庭で昼食を摂る羽目に……
徳人なんかいつも別の人と食べてるくせになんで断んないんだよ! 宮下さんもこんな得体の知れない男二人混ざってて平気なのか? 申し訳なすぎる。
「へぇ、じゃあ自殺しようとしてたのってホントなんだー」
「えへへ、そうなの」
「思ってたよりヤバいね!」
「それほどでも〜」
なんなの? なんで会話出来てんのってクオリティの会話内容だけど大丈夫なの?
「ワカマ、こいつ誰」
え、さっき説明したよね?
「え、だから俺の…」
「とーまの親友の徳人だよ〜!ヨロシクあっちゃん!」
「ノリ軽……」
逆になんでこっちはちょっとギクシャクしてんの? ギャルとパリピって一緒じゃないの?
「みんなで食べるお昼って面白いね」
染川さんは呑気にそんなことを呟く。
「またみんなで食べようね!」
「えっ、まあ……みんながいいならいいけど」
「いいねいいねー! 俺大歓迎!」
「まあ、ユキが言うなら」
正直謎メンバーだし話弾んでるかって言われるとそうでもないような気がするけど。まあ染川さんが楽しんでくれるなら、これはこれでいいかな。
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