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「洋菓子の方が好きなのになんで和菓子屋さんになったんですか?」
「んー、進路決める時期になかなかやりたい事が見つからなくて、ばあちゃんにどうすんだって聞かれた時にばあちゃん和菓子好きだから和菓子職人にでもなろうかなって言ったら喜んじゃって、そんで後に引けなくなったっていうか、そういうのもいいかなって思って」
「へぇ、意外」
「そお?」
「はい
和菓子が大好きで職人さんになったんだと思ってました」
莉子が大きな目をくりくりさせて佐山を見つめた。
「ハハハ、期待はずれでごめんね
でもきっかけはそんなだけど、この仕事は好きだよ
特に新しいお菓子を作り上げた時はホントそう思う
チーズケーキがいつもより美味しく感じるんだ」
「やっぱりチーズケーキなんだ」
「そう
最初は冷蔵庫にチーズケーキ入れとくと旦那さんが「なんだこれは!!」って怒ってたんだけど、最近は何も言わずにスルーしてくれるようになったよ
きっと見慣れたんだろうね」
「そんなにしょっちゅう食べてるんですか?」
「んー、毎日ではないけど、一度作るとホールだから食べ終わるのに数日かかるでしょ?
ここの家の人はあんまりチーズケーキ好きじゃないみたいで食べてくれないから」
「なんで家じゃなくてここなんですか?」
「んー、チーズケーキ食べたいときって仕事が忙しい時だから帰るのも遅くて家で作ってる暇は無いっていうか、何もしたくないっていうか……」
「じゃあこんなにのんびりしてる暇ないんじゃないんですか?
ヤダ、邪魔しに来ちゃったみたい」
「そんなことないよ
どうせ途中でチーズケーキ食べるんだからおんなじ
シュークリーム好きだし、一人で食べるより美味しいし
嬉しいよ」
そう言われると嬉しくて、莉子の頬が思わず上気する
「で?莉子ちゃんは今日はどうしたの?
お兄さんで良ければ話聞くけど?」
佐山は調理台に両腕をついて莉子に迫った。
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