137人が本棚に入れています
本棚に追加
莉子が飴細工のウサギを大切そうに持って家路を急いでいると、後ろから莉子を追い抜いて行った自転車が突然止まって振り向いた。
「あ、ムラス!」
「おう
帰り?」
「うん」
「乗ってくか?」
家まではまだ少し歩かなくてはいけない。
「うん、乗せて」
莉子は下村の自転車の後ろにまたがった。
「莉子さぁ、もっと色っぽく乗れねーの?」
「はあ?
何それ
ムラスに色っぽさアピールしても意味ないし、これじゃないと私多分落ちる」
下村は返事をしないで立ちこぎして走りだした。
急にスピードを上げたせいで莉子の上体がグラリと揺れて思わず下村の腰に両手をきつく巻き付ける。
「ムラス、怖い!!」
下村は聞こえているのかいないのか、立ちこぎはやめてもスピードは緩めない。
莉子は更にきつくしがみつく。
莉子の家の前で自転車を急停止させると、莉子の頭が下村の背中にゴツンとぶつかった。
「ムラス痛い」
おでこをおさえながら文句を言う莉子に、下村は前を向いたまま、
「莉子さ、俺じゃダメなの?」
まだ下村にしがみついたままの莉子は、下を向いたまま少し間を置いて、
「ごめん」
と言うと、下村は、
「そっか、わかった」
と前を向いたまま言った。
最初のコメントを投稿しよう!