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次の日も、莉子は高橋菓子店を訪れていた。
と言っても今日は呼び出されたわけではない。
下村の応援をするという事を口実にやってきたのだ。
来る途中で買ったシュークリームを差し入れして、佐山の仕事を黙って見ていた。
佐山の手は魔法のように次から次へと仕事をこなしていく。
それをぼーっと眺めていると、
「莉子ちゃん、何かあった?
元気ないね。」
と、佐山が手ぬぐいで手を拭きながら莉子の前の椅子に座った。
「そうですか?」
そう言ってごまかそうとするけど、佐山は莉子が持ってきたシュークリームをお皿に乗せて、
「お持たせで悪いけど」
と目の前に出してくれる。
佐山は何も言い出さない莉子に深く突っ込むような事はせずにシュークリームにかぶりついた。
「これ、美味しいね」
「でしょ?
私ここのシュークリームめっちゃ好きなの」
「そうなんだ
俺も実はシュークリーム好きなんだ」
「よかった
チーズケーキも好きだし、実は和菓子より洋菓子の方が好きだったりして」
「実はそうなんだ」
「うそっ、冗談で言ったのに」
莉子は驚いてかじりついたシュークリームから顔を離した。
「旦那さんには内緒だよ
旦那さんは和菓子一筋だから」
「うん」
莉子は佐山と秘密を共有できると思うと嬉しく思った。
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