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そのうちに佐山の飴細工が始まる。
お菓子を購入した客が佐山のところへ行くと、見本に並んでいるうさぎと鶴を見せて、
「どちらがいいですか?」
と、佐山が聞いた。
周りには他の客も集まって来て人だかりができる。
小さな女の子が人だかりの後ろから首を右にしたり左にしたりしてなんとか覗こうとするのを見つけた莉子は、女の子の母親に断って普通は客は入れないようにしてある佐山が使っているテーブルの向こう側へ女の子を連れて行った。
佐山の隣で飴細工作りを見た女の子は、
「わぁー。」
と声を上げて、口を開けたまま佐山が作る飴細工にみいっている。
注文された鶴が出来上がると周りから一斉に拍手が上がって、女の子も興奮気味に、
「すごい!!」
と言って飛び跳ねた。
そんな女の子を莉子が『可愛いな』と見ていると、佐山と目が合う。
佐山も莉子と同じように優しい微笑みで女の子を見た後に莉子を見て、お互いに口元に笑みを浮かべた。
佐山は腰から下げていたバッグの中から何かを一掴み女の子に渡すと、それを見た女の子が嬉しそうに、
「ありがとう」
と言って走り去った。
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