07 チョーチョーチョー/所造天下大神のアルバイト

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07 チョーチョーチョー/所造天下大神のアルバイト

***  アルバイトを終えて帰宅。  オオクニヌシさんのへやで、テレビのニュースを見ながら夕食。  霧島連山の新燃岳の噴火のニュース。  1959年に、約150年ぶりに火山活動が始まり、2018年3月6日に爆発的噴火が起きる。いまだ火山活動は続いてる。 「なんとなく物語の始まりを感じるね」 「そ、そうだ、な」  布で作られたクエビコさんの頭が床を転がる。  霧島連山は天孫降臨神話の山。霧島連山を神体とする霧島神社。霧島連山の噴火で遷祀を繰りかえし、論社4社がある。比定社は霧島神宮。祭神は高天原の日神の子神カチハヤヒ(オシホミミ)。ホヒヒコの兄神。天孫神ホノニニギの父神。 *  2018年2月14日にさいたま市に戻り、約1月が経つ。  平和な、4コママンガのように平穏な生活。オオクニヌシさん、スサノヲさん、クエビコさん、キューピーちゃん、ワカヒコくんの神話の代表格神様と平々凡々な生活が続く。  神様は食べなくても、眠らなくてもいいらしいけれど、私と生活を合わしてくれる。  スサノヲさんは、大学のときはボディガード。あと、剣技を教えてくれる。タカヒメの約束で修練は続けてるけれど、自己流は良くないと思い、スサノヲさんに頼む。  腕力、筋力の無い女神は男神よりも剣力(タチカキ)を付けなければ戦場で勝てない。勝てなければ戦場で男神を動かせない。  国ツ軍の大軍将はスサノヲさん、東の軍の軍将はオオクニヌシさん。だけど国ツ軍をまとめてたのはツクヨミ。ツクヨミの生まれ変わった私に掛かる……。 「チョープレッシャー」思わず独り言ちる。思わずワカヒコくんのチョーがうつる。  クエビコさんとワカヒコくんは、昼は大学の図書館に通う。夜は、クエビコさんは古の戦を教えてくれる。ワカヒコくんは私とともに学ぶ。  だけど。スサノオさんはチョー自己流剣技で……。 『ドバーッというかんじで斬る。いや、違うな。ズバーッというかんじだ。ズバーッ』 『ドバーッと、ズバーッはなにが違うの』  だけど。クエビコさんはチョーいいかげんで……。 『コ、コトシロは、すごく、すーっごく、脳髄が弱い。オレの、あ、足元に及ばない』 『クエビコさんの足元はどこなの』  今日の修練でスサノヲさんにキレてしまう。  ドバーッ、ズバーッのつぎはガバーッだ。なにがガバーッだ。  ワカヒコくんと私はチェストの上の神棚に手を合わせる。ノートPCのあった処に神棚を作り、トミビコさんの分霊を祀る。トミビコさんは私の剣技の師。もっと教えてもらいたかった。 『ツーちゃん、トミさんが生きてたら、チョーよかったね』  大学は休み。平日は、昼は修練とアルバイト、夜は勉強。一生分の修練と勉強だ。  チョー命がけだから、ね。  あと、スサノヲさんが姉神と呼んでくれる。ちょっと、よそよそしいけれど。昨日もスサノヲさんの肩に触れたときに……。 『スサノヲさん、肩になにか、ついて……』 『あ、あ、姉神、さ、触るときは触ると言ってくれ』慄く。 『なんで言わなくちゃいけないの』  赤らめた顔を隠すように俯く。チョー乙女。 『…………』 『どうしたの』  床を見ながらブツブツと呟いてる。耳を近づける。 『……だったんだ。姉神だったんだ。姉神だったんだ。姉神だったん……』  私は聞かなかった。うん、聞かなかった。  国ツ軍大軍将、次代黄泉大神は、私(ツクヨミ)が兄神でなく、姉神であるとわかり、ノイローゼぎみ。私も、なんで私がツクヨミかわからないけれど、受けいれたのに。ったく、チョーダラシない。  オオクニヌシさんは、平日は近所のコンビニでアルバイト。所造天下大神(アマノシタツクラシシオオカミ)がアルバイト。そして私に合わせて毎日の朝食と夕食を作る。  アルバイトを始めて数日後。夕食でオオクニヌシさんのへやに入ったとき、『いらしゃいませ』と迎えられた。チョー笑った。 *  オオクニヌシさんのへやの家賃、食費や光熱費はタカヒメが払ってる。出雲神の軍事費が気になる。ムーな秘密結社があるのか。造幣局広島支局は出雲神の統治下にあるのか。 「オオクニヌシさん、安芸国佐伯郡は出雲国の統治下だったの」笑いながら訊く。 「ええ、タカヒメが治めてました」割烹着姿のオオクニヌシさんが笑いながら答える。  白色のシャツとノンダメージのジーンズ、白色の割烹着。胸元に小さく花の刺繍。私を狙ったような眼鏡好男子。私のへやとおそろいのローテーブルに食器を置く。手首にブレスレット。私とおそろいの翡翠の勾玉のついたブレスレット。やはり狙ってる。  スマホを弄る。厳島神社の元の祭神は出雲神。 「あれ、門客神社に……」  ……ま、いっかー。  タカヒメはオオクニヌシさんの娘神。オオクニヌシさんを長とするカムド族は血縁、地縁による一族でなく、契による義親子、義兄弟の一族。だから様々な国ツ神が、自身の一族と別にカムド族となってる。まるでヤ〇ザのような。  ツクヨミに生まれ変わって良かったことはニウヒメさん、タカヒメと遇えたこと。ニウヒメさん、タカヒメのような、素敵な女神になりたい。  私はニウヒメさんに遇うため、オオクニヌシさんはニギハヤヒに色々と訊くため、大阪旅行を計画中。父神の威厳を保ちたいオオクニヌシさんは、娘神に頼らず、アルバイトで旅費を稼いでる。島根旅行で私の貯金を遣ってしまい、旅費はない。  さて、大学の休み中に行けるんだろうか。行けないと、物語は始まらない。クエビコさんのムーな話ばかり。読者が読まなくなる。チョーチョー困る。
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