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第一章
「砲撃術式、よーい!」
ずらりと並んだ魔導士たちが一斉に片手を掲げる。それに合わせて各々の元に長細い輝きが現れた。
「ってぇ!!」
死を告げる砲弾が一斉に空へと飛び出してゆく。
狙いは騎兵たち。大地を震わせた黒い影は、一斉砲撃を受けてただの一撃でほぼ壊滅した。
着弾した側から大量の血肉を撒き散らす悪夢の魔法に、風に乗って血と怨嗟の声が届いてくる。
これだけの技ともなれば魔導士たち側の消耗も激しいのだが、相手の魔導士がいない以上、最大効果を発揮するのもまた事実だ。
「……!敵左翼後方に増援の魔導士部隊を確認!」
「撤退いたしますか?」
見張りがあげる声に、この場で唯一年嵩の男―――ザルンツベル魔導士軍団長、クガイは一瞬の間考えた。
「いや、それには及ばん」
砲撃で魔力を消費した魔導士たちを暫し下がらせる。
代わりにたった10人程度の一般兵と共に、1人の魔導士が呼び出された。
「ユウハ…いけるな?」
兵士らしさも魔導士らしさもない。
頷き目礼を返すのは、戦場になどまるで似つかわしくないような―――それは美しい少年だった。
銀の髪は星の光を抱いて弾くように艶やか。血色はあまりよくないが、それでも輝く白皙の美貌だ。
ザルンツベル帝国魔導士軍団、首席魔導士。
それが少年、ユウハの今の肩書だった。
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